保険会社が、自治体の社会課題を支援する?!「+まち(ぷらまち)」が目指すもの
2022年06月08日
&eは、事故が起きたときにだけ役に立つ自動車保険ではありません。世の中から事故をなくすために様々な取り組みをしています。そのひとつが今回ご紹介する「+まち(ぷらまち)」というプロジェクト。&eのお客さまの安全運転が安全・快適なまちづくりにつながるんです。このプロジェクトの具体的な内容について、CX推進部の片桐億人さんに聞きました。
片桐 億人(かたぎり おくと)
東京海上日動火災保険にて代理店の経営支援・商品販売支援を担当したのち、2020年にイーデザイン損保に入社。現在はCX推進部にて&eのアプリ開発チームに参画。「+まち」をはじめ、お客さま・自治体と共創し新たな価値・サービスの開発に従事している。
事故時以外も「加入してよかった」と思える保険へ
――+まちの「&eのお客さまの安全運転が安全なまちづくりにつながる」という趣旨について、最初はあまりピンとこないお客さまも多いと思います。具体的にどのようなプロジェクトなのか、教えてください。
片桐さん:+まちでは、まず全国の自治体から「安全で快適な世の中をつくりたい」という想いが込められた施策の企画を募集します。その後、&eのお客さまに「この企画を応援したい」というものに投票をしていただきます。そこで選ばれた企画に対して、イーデザイン損保で寄付を行い支援することで、自治体と、&eのお客さまと、そしてイーデザイン損保で事故のない安全な社会を共創しようという取り組みです。
そして、&eが寄付できる企画の数は、お客さまの事故率と関係しています。事故率が低くなればより寄付できる企画が増えて、安全・快適な社会の実現に貢献できるという仕組みです。
――どのような想いでこのプロジェクトが生まれたのでしょうか?
片桐さん:これまで、&eのお客さまにアンケートなどを取ると、「(自分が無事故でいるときは)自動車保険の価値を感じにくい」という声が多く寄せられていました。特に若い世代から多かったのです。そこで、安全運転を実現できているときでも自動車保険に加入してよかったと思えること、お客さまやみなさまの暮らしている社会に還元できるような取り組みを実現したいという考えから、「まちにとってプラスになること」という意味の+まちが生まれました。
ちなみに、この前身となる取り組みは、&eが生まれる前の2020年度から実施しているのですが、これまではイーデザイン損保の社内でアンケートを取り支援自治体を選定していました。+まちでは、&eのお客さまに寄付先を選んでいただくことで、お客さまと一緒に安全なまちづくりを行っていくことが出来るようになりました。
――お客さまの自動車保険加入が社会に還元されるという発想は大変興味深いです。+まちの取り組みがはじまるまでには、どのようなアイデアが挙がっていたのでしょうか。
片桐さん:お客さまの地元に還元する「ふるさとドライバー」といった企画も検討されましたね。しかし、検討を進める中で「お客さまは、地域に関係なく自分の安全運転が社会に役立つのであれば、応援したいと思える企画が実現すれば、喜ばしい」というお客さまの意向が見えてきて、お客さまが選んだ具体的な自治体の取り組みを支援していくという現在の方向性に収まりました。
自治体が抱える「実現したいけれどハードルが高い」というジレンマ
――企画を実現するために自治体のニーズなども探ったのでしょうか?
片桐さん:そうですね。企画のエントリーを募集するタイミングや、募集するテーマの設定などについて、各自治体へのインタビューをもとに検討していきました。テーマについては絞りすぎると自治体のアイデアにも制限が加わってしまうので、「安全で快適な社会づくりに役立つこと」というテーマにして自治体に自由に考えていただく形にしています。自治体から提出いただくエントリーシートについても、なるべく多くの自治体に参加してほしいという考えから最低限の内容でエントリーできるようになっています。
――事故のない世界を実現するためのコラボレーションには、企業同士、企業と団体、企業と大学・研究機関など様々な形があると思いますが、+まちで支援の対象を自治体に絞ったのには理由があるのでしょうか?
片桐さん:大前提として「お客さまに還元したい」という想いがあり、それを実現する方法として「社会がより安全・快適になること」を推進したいという考えになりました。安全・快適な社会のインフラを作るのは、みなさまがお住まいの自治体です。そこで、自治体から安全・快適な社会を創るための課題を企画という形で募って、支援していこうという形になりました。
自治体は社会の交通環境について様々な課題意識を持っていますが、予算の確保などにハードルもあり、前例のないアイデアや新しい取り組みにチャレンジしたいけれど実現できないこともあります。そうしたアイデアを応援することで、安全・快適なまちづくりに貢献できればと考えています。
――自治体からの反響はいかがですか?
片桐さん:「一緒に企画をやりたい」「こういう企画はありがたい」という自治体は非常に多いです。というのも、自治体が民間企業に政策・施策を公募することはよくあるのですが、自分たちが実現したい施策を民間企業のスキームに公募して寄付してもらうということ自体が新しいんです。
2022年度は初めて&eの取り組みとして募集するので、より盛り上がるのではないでしょうか。様々な自治体とつながることで、(+まち以外の)イーデザイン損保の様々な取り組みにも良い影響が生まれればと考えています。
実際に採用された企画をご紹介します!
――これまでの採用自治体について教えてください。
片桐さん:2020年度募集分については兵庫県神戸市と滋賀県日野町の企画を支援しています。
神戸市では、地元の高校生が観光地「摩耶⼭掬星台」の道路混雑状況を分析するAIツールの開発に取り組んでおり、これを支援させていただきました。「摩耶⼭掬星台」は、日本三大夜景のひとつ。周辺道路では夜になると慢性的に渋滞が発生していて、地域住民の安全・快適な生活にとって大きな課題になっています。
この取り組みでは、渋滞解消という本来の目的だけでなく、AIの仕組みや実践的な活用方法を高校生たちが学ぶきっかけにもなり、参加した生徒からは「企業と一緒に工夫しながら研究に取り組むことで、実際に社会で起こっている問題と向き合うことができ、とても良い経験になった」という感想も寄せられています。
滋賀県日野町では、地元の子どもの安全・快適な自転車の利用を推進する取り組みを支援しています。日野町は中学・高校生の通学⼿段は⾃転⾞が主流ですが、通学路は交通量の多い国道や、急な坂道などで、安全確保が大きな課題となっています。
また、2021年度募集分については、大阪府枚方市、静岡県磐田市を支援することが決定しています。
――企画選定にあたってのポイントについて教えてください。
片桐さん:それぞれの企画について、「安全・快適なまちづくりに貢献できるか」「地元住民からのニーズがあるか」「他の自治体にも良い影響を生み出せるか」「企画の斬新さ、新規性があるか」といった基準で評価シートを作り審査しました。2022年度募集分からはお客さまに投票いただくことになりますが、これまで決定した分については評価シートをもとにしてイーデザイン損保の社員が投票を行いました。
+まちのゴールは、寄付だけではない
片桐さん:+まちとしては、実現したいことが2つあります。ひとつは寄付を通じて自治体を支援するということ。そしてもうひとつは寄付という形の支援ができない場合でも、イーデザイン損保をはじめ東京海上グループのソリューションを活かして課題解決を支援することです。
例えば、応募があった企画のひとつは、審査段階で&eの別の取り組み「もしかもマップ」のプロジェクトと非常に親和性が高いなと感じまして、市の担当者にその話をしたところ「ぜひ一緒にやりたい」という意見をもらいました。今後は「もしかもマップ」の活用も見据えた共創の取り組みとして一緒に進めていく予定です。
――&eが「SafeDriveWith」というプロジェクトで検討を進めている安全なまちづくりのアイデアと、自治体の抱える課題、それぞれが出会うことで化学反応が生まれると面白いですね!
片桐さん:「SafeDriveWith」にとってもこの+まちが自治体とつながる入口になるといいですね。+まちに集まった自治体の企画=社会課題から寄付につながることも、あるいは「SafeDriveWith」のプロジェクトとつながり課題解決につながるアイデアを自治体に実装していくことも、イーデザイン損保の他のソリューションで支援していくことも、様々な可能性があると思います。
自治体とともに課題解決を目指す取り組みへ
――今後の+まちの展開について教えてください。
片桐さん:2022年度分の自治体からの企画募集は11月頃を予定しており、エントリー審査を経て2023年6月頃にはお客さまに投票対象になる企画の公開と投票開始のご案内ができる予定です。そして2023年夏には投票の結果に基づいた寄付を実施する予定です。今後の予定についてはWebサイトにも情報を公開していきますので、ぜひご覧ください。
――+まちのこれからについて、片桐さんの想いを聞かせてください。
片桐さん:+まちを寄付に留まらない取り組みにしていきたいという想いは強いですね。自治体が抱える課題解決への貢献はもちろん、イーデザイン損保や東京海上グループの様々な取り組みにも良い影響が生まれればと考えています。
私自身、自治体からのエントリーシートに書かれた様々な社会課題に触れながら、交通環境に対する自治体の課題・悩みの多さを実感しています。こうした課題は、声を上げていただかないと(世の中が)気づくことができません。この+まちが、自治体が遠慮なく声を上げることができる仕組みになっていけばいいですね。
これから全国の自治体にこの+まちを知っていただくための取り組みを進めていきますので、多くの課題を寄せていただき、イーデザイン損保が一緒に解決の方法を模索していくことができればと考えています。
撮影のためにマスクを外しています。
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