車が水没したら自動車保険で補償される?車両保険の補償内容や等級への影響を解説
2024年10月25日
近年、水害による被害が増加しています。市街地より河川や山に近い地域の方が、水害の発生リスクは高いと考えている方もいるでしょう。
しかし、河川から離れた地域でも、下水道管などから水が溢れる内水氾濫などの「都市型水害」が起こる可能性があります。
自宅の建物や家財だけでなく、自動車にも被害が及ぶ場合があるため、火災保険だけでなく自動車保険でも備える必要があります。今回は、車が水没した場合の損害を補償する車両保険の内容や等級への影響、水害に対する対策や対処方法を説明します。
水害とは
水害とは、大雨や台風による降雨を原因として引き起こされる災害です。具体的には、集中豪雨や大規模な台風によって次のような災害が発生します。
- 河川の氾濫
- 高潮
- 土砂崩れ
- 内水氾濫
土砂災害や高潮、浸水の被害が発生しやすい場所には、次のような地形の特徴があります。
- 傾斜が急で険しい山に囲まれた地域
- 海岸付近の低地
- 河川の流域や河川敷だった地域
しかし、河川や海岸、山から離れた地域であっても水害にあうリスクはあります。市街地で発生するリスクが高い水害に「内水氾濫」があります。
内水氾濫とは、集中的な豪雨などによって下水道管や水路から水が溢れ、住宅や土地が水に浸かる現象です。標高が低い地域やアスファルトなどで地面が舗装された場所で発生しやすいという特徴があります。
車は水没するとどうなる?
水害によって自動車が水没した場合、生じる可能性のあるトラブルの例は以下の通りです。
- パワーウィンドウが作動しない
- ドアが開閉できない
- エンジンが止まる
車種によってエンジンルームの位置は異なるので、一概にはいえませんが、ある程度の水位を超えるとエンジン内部に水が入り、故障の原因となります。
特に、ハイブリッド車や電気自動車は、高電圧システムを搭載しているので注意が必要です。水没した車は火災を起こす可能性もあるため、水が引いたあとでもエンジンをかけてはいけません。
洪水で車が水没した場合、自動車保険で補償される?
一般的に、洪水や高潮などで車が水没して損害が発生した場合、車両保険を付帯している自動車保険であれば対象となります。ただし、原則、地震や噴火を原因とした津波による損害は補償されません。
保険会社によって車両保険の契約タイプは異なります。契約の内容によっては、水害による損害がお支払いの対象外である場合があるので、加入前に確認しましょう。
また、走行中に水没して車が動かなくなった場合は、自動車保険のロードサービスやJAFのレッカーサービスを利用できる場合があります。
自動車保険&e(アンディー)には、ロードサービスが自動付帯されています。利用回数に制限はなく、翌年の等級や保険料への影響はありません。※1
作業の内容などによって、お客さまに費用負担が発生する場合があります。また、作業の内容によっては、利用回数は保険期間中1回に限ります。
車両保険の補償内容
車両保険とは、自動車保険の補償の一つです。
契約している自動車が、偶然な事故によって損害を受けた場合に対象となります。
補償の対象となる主な事故例は、以下の通りです。
<主な事故例>
- お車との衝突
- 盗難
- 台風・洪水・高潮※2
- 火災・爆発、落書き・いたずら・窓ガラス破損、飛来中・落下中の他物との衝突
- 動物との衝突
- 当て逃げ
- 電柱・ガードレール・自転車・歩行者との衝突
- 転覆・墜落
ただし、車両保険は、契約のタイプや特約の設定によって補償される内容が異なる場合があります。契約タイプなどについて詳しくみていきましょう。
津波による水没は対象外
車両保険の契約タイプ
一般的に、車両保険には「一般」と「限定(エコノミー)」の2種類があります(保険会社によって、名称が異なる場合があります)。
主な違いは、「限定(エコノミー)」は保険料が安い代わりに補償範囲が限定され、自損事故などの一部事故が補償対象とならないことです。
&eの一般タイプの車両保険と限定タイプの車両保険は、以下の表のように補償される範囲が異なります。
&eでは、洪水や高潮など水害による損害(津波による水害などは除く)は、一般タイプでも限定タイプでも補償されます。どちらのタイプでも補償されるのが一般的ですが、詳しい補償内容は、加入している保険会社に確認しましょう。
車両保険を使った場合、等級はどうなる?
等級制度(ノンフリート等級別料率制度)とは、前契約の有無や前契約の事故の有無・種類に応じて、次契約に適用される等級(1〜20等級)と割増引率を決める制度です。適用される等級によって、翌年の自動車保険の保険料が割引・割増されます。
自動車保険において、事故は「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」の3種類に分けられます。
&eの場合、洪水や高潮によって車両保険を請求した場合、「1等級ダウン事故」に該当し、翌年の等級は1等級下がります。
車を水没させないための対策
自動車は、一定の水位までは耐えられるように設計されています。しかし、集中豪雨や大規模な台風が予想される場合は、水没による被害を避ける心がけが大切です。
車を水没させないための2つのポイントを説明するので、ぜひ参考にしてください。
車で冠水路などを通らない
局所的な雨が降ったときに、水が溜まりやすい場所を通らないように気をつけましょう。高架下や電車のガード下、立体交差のアンダーパスなどは水が溜まりやすい構造です。
また、見た目で水深を判断するのは難しいため、注意が必要です。
車種などによって走行できるかどうか異なりますが、JAFが2010年4月8日に実施した冠水路走行テストによると、セダンタイプの車の場合、水深60㎝のアンダーパスでは途中でエンジンが停止し立ち往生してしまう可能性があります。
車を高台や立体駐車場へ避難させる
大規模な水害が起きた場合、そのあとの片づけなどのため、車は守っておきたいでしょう。
水没するリスクが高いときは、あらかじめ車を移動させてください。なお、雨が降り始めてから、台風が接近してからの移動は危険を伴いますので、行わないようにしてください。普段から高台にある公園や商業施設の立体駐車場など、自宅や勤務先付近で避難できる場所を探しておくと、万一の際、焦らず対応できます。
ただし、商業施設の駐車場についてはあらかじめ、市町村と提携し、災害時には無料で開放することが発表されている商業施設であるか、確認しておく必要があります。
また、ハザードマップなどで自宅周辺の浸水・冠水リスクを把握しておきましょう。
車が水没したときの対処法
実際に、水害によって車が動かなくなってしまった場合の対処方法を説明します。
車内にいるときに車が動かなくなった場合
冠水路を走行中に車が動かなくなった場合、まずエンジンを停止します。
エンジンを止めたら、すぐに外に出ず、片足をつけて水深を確認しながら進んできた方向に戻りましょう。その際、マンホールのふたが外れている場合もあるので注意が必要です。
水中に転落してしまった場合、窓を開けて脱出します。仰向けになり、背中側から外に出ましょう。
浸水が進んで窓から出られない場合は、胸から首あたりまで浸水するのを冷静に待ちます。胸から首あたりまで浸水した状態になったら、ドアロックを解除し、足でドアを蹴り開けて脱出しましょう。
また、窓やドアが開かなくなる場合に備えて、車内に脱出用ツールを用意しておくとよいでしょう。カッターやポンチが付属している脱出用ツールがあれば、シートベルトを切ったり、窓ガラスを割ったりできるので、スムーズに脱出できます。
駐車している車が水没した場合
エンジンやブレーキ機構が故障している可能性があるため、ご自身でエンジンをかけてはなりません。
水が引いていたとしても、火災が発生するリスクがあります。水没した場合は、速やかにロードサービスや販売店に連絡し、点検してもらいましょう。
まとめ
日本では近年、集中豪雨や台風などによる水害が増えています。これらの原因によって車が水没した場合、車両保険を付帯している自動車保険であれば一般的には補償の対象となります。
車両保険には一般タイプと限定タイプの2種類があり、洪水や高潮など水害による損害(津波による水害などは除く)は、どちらのタイプでも補償されるのが一般的ですが、詳しい補償内容は、加入している保険会社に確認しましょう。
エンジンルームなどが水没すると、火災のリスクがあるため点検や修理が必要です。万一の水害に備えて、車両保険で備えておくと安心です。
監修:熊谷 正和
2005年7月に埼玉県川口市で開業後、ファイナンシャルプランニングを軸としたコンサルタントとして活動。開業当初から、個人のライフプランから法人向けのコンサルティングまで幅広く支援。得意分野は、住宅ローン・保険・資産運用などのライフプラン相談。毎年数百世帯、述べ2,000世帯を超えるライフプラン相談の実績を持つ。