自動車保険における同居の親族とは?その補償範囲と注意点について

2024年3月8日

自動車保険では、補償される運転者の範囲を決めるときや、等級の引き継ぎなどの場面で「同居の親族」という言葉がよく出てきます。
自動車保険における「同居の親族」とは、どこまでの範囲を指すのでしょうか。また、別居したときにはどのような点に注意して、どのような手続きが必要なのでしょうか。
今回は、自動車保険における「同居の親族」の範囲や、別居したときの手続きについて解説します。

自動車保険における
「同居の親族」とは?

まずは、自動車保険における同居の親族の範囲について、「同居」と「親族」の2つに分けて解説します。

「同居」とは

自動車保険における「同居」とは、「同一家屋に居住している状態」をいいます。
なお、イーデザイン損保の自動車保険&e(アンディー)においては、構造上は同一家屋であっても、キッチンなどの生活設備を共用していない二世帯住宅などの場合は、同居とはみなしません。同一敷地内の別の家屋で生活していても、もう一方がキッチンなどの生活設備を有さない「はなれ」である場合は、同居として取り扱います。なお、同居の要件には、生計の同一性や扶養関係の有無、住民票記載の有無は問いません。

ただし、これら同居の取り扱いについては、保険会社によって異なります。迷った場合は、加入している保険会社に確認してみましょう。

「親族」とは

自動車保険における「親族」とは、一般的に、6親等内の血族、配偶者、および3親等内の姻族を指します。
「6親等内の血族」という範囲はとても広くなっています。本人から見て、1親等は子どもや父母、2親等は孫や兄弟、3親等は甥や姪、おじやおばなどを指します。6親等となると、はとこやいとこの孫まで含まれます。一方、「3親等内の姻族」とは、配偶者の父母(1親等)、祖父母・兄弟(2親等)、曾祖父母、甥・姪、おじ・おば(3親等)などを指します。
この2つと配偶者を含めて「親族」を指すため、その範囲はとても広いことがわかります。

「同居の親族」がいる場合、
知っておきたいこと

このように、同居の定義と親族の範囲について詳しく知ると、自動車保険についてさらに深く理解できるようになります。自動車保険では、さまざまな場面で「同居の親族」という言葉が出てくるためです。
ここからは、「同居の親族」というキーワードがなぜ自動車保険において重要なのか、特に知っておきたい事項を交えてお伝えします。

補償される運転者の範囲

自動車保険では、補償される運転者の範囲を限定することで、保険料を安くすることができるのが一般的です。限定する方法には、運転者の「範囲」を設定する方法と、運転者の「年齢」を設定する方法の2つがあります。これらの条件を設定して自動車保険に加入している方や、これから条件を設定して保険料を安くしようと考えている方は、以下の点についてチェックしてみましょう。

運転者限定

「運転者限定」は、運転者の範囲を限定して、補償される運転者の範囲を限定するものです。例えば&eでは、「運転者限定なし」「家族限定」「夫婦限定」「本人限定」の4つから選択でき、範囲を限定するほど保険料を安くすることができます。
例えば、ご自身と配偶者に加えて、同居の子ども(「同居の親族」)のみがお車を運転する場合は、「運転者限定」を設定しましょう。補償の範囲を適切に設定することで、保険料を抑えることができます。

○:補償されます ×:補償されません

(注)

運転者年齢条件を設定した場合は、「1.主に運転される方」「2.1の配偶者」「3.1または2と同居している親族」については、運転者年齢条件を満たす方が運転中の事故に限り補償します。

運転者年齢条件

もうひとつの方法は、運転者の年齢を設定して、運転者の範囲を限定する「運転者年齢条件」です。例えば&eでは、「年齢問わず補償」「21歳以上補償」「26歳以上補償」「30歳以上補償」の4つから選択でき、こちらも範囲を限定するほど保険料を安くすることができます。
運転者年齢条件は、上図の「1.主に運転される方」「2.1の配偶者」に加えて「3.1または2と同居している親族」に適用されます。運転者年齢条件を設定する場合は、これらの方の最も若い年齢に合わせて設定しましょう。
例えば、ご自身が50歳、その配偶者が45歳、同居している子ども(「同居の親族」)が22歳の場合には、一番年齢の低い子どもに合わせて「21歳以上補償」を設定しましょう。

○:補償されます ×:補償されません

「1.主に運転される方」「2.1の配偶者」「3.1または2と同居している親族」のうち、ご契約のお車を運転する最も若い方の年齢

(注)

運転者限定を設定した場合は、限定した方が運転中の事故に限り補償します。

等級の引き継ぎ

お車を「主に運転される方」が変更になった場合は、契約内容の変更手続きを実施したうえで、等級をそのまま引き継いで契約を継続することができます。ただし、それは「配偶者」や「同居の親族」に変更した場合に限ります。「別居の親族」に変更する際は、等級を引き継ぐことができませんので注意しましょう。

これを上手に活用することで、保険料を節約できるケースをご紹介しましょう。
例えば、同居している子どもがお車を購入し、新たに自動車保険を契約する場合です。家族間での等級引き継ぎを利用して、子どもが親の等級を引き継いで契約し、親は新規の等級で契約することで、トータルの自動車保険の保険料を大幅に節約できる可能性があります。

詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

自動車保険の等級は家族間で引き継ぎができる!

セカンドカー割引

ご自身が新しくお車を購入して初めて自動車保険を契約する場合は、「同居の親族」がお車を持っているか確認しましょう。そのお車の自動車保険が11等級以上であれば、初めて自動車保険に加入する際の保険料をお得にすることができる場合があります。それが「セカンドカー割引」です。
初めて自動車保険に加入する場合は、通常6等級からスタートしますが、セカンドカー割引が適用されると7等級からスタートすることができます。自動車保険は等級が進むほど保険料が安くなりますので、1等級分保険料が安くなるというわけです。
セカンドカー割引の適用を受けるためには、申し込み時に申告が必要です。また、保険会社により適用条件は異なります。同居の親族でお車を運転されている方がいる場合には、これらを確認したうえで手続きを進めましょう。

セカンドカー割引について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

2台目以降の自動車保険を節約する方法~セカンドカー割引を解説~

親族が別居する場合の注意点は?

このように、自動車保険の契約に際しては、同居の親族がポイントとなるケースがあります。では、例えば、同居していた子どもが結婚や就職を機に別居する場合は、どのような点に注意しなければいけないのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

運転者限定・運転者年齢条件の設定に
関する注意点

主に運転される方(50歳)・配偶者(48歳)・同居の子ども(22歳)が運転者で、現在「家族限定」「21歳以上補償」で契約しているケースについて考えてみましょう。以下の2つのパターンに分けてみていきましょう。

子ども(22歳)が結婚し、別居した

子どもが結婚を機に別居したが、帰省時に親の車を運転する可能性があるのであれば、運転者限定を「運転者限定なし」に契約内容を変更する必要があります。
「家族限定」で補償されるのは「主に運転される方」「配偶者」「同居の親族」「別居の未婚の子」であるため、結婚して別居した子は補償の対象になりません(なお、ここでいう「未婚」とは法律上の婚姻歴がないことをいいます)。「運転者限定なし」に変更しない場合、帰省時の運転で事故を起こした際に補償が受けられないので注意しましょう。
また、運転者年齢条件は「30歳以上補償」に変更しましょう。別居の子は、運転者年齢条件にかかわらず補償されます。

子ども(22歳)が就職で一人暮らしを始め、別居した

子どもが別居したとしても、子どもに法律上の婚姻歴がなければ、運転者限定の変更は必要ありません。帰省時に親の車を運転して事故を起こしても、「家族限定」で補償されます。
これは、前述のとおり「別居の未婚の子」が、「家族限定」の補償の範囲に含まれるからです。
また、運転者年齢条件は「30歳以上補償」に変更しましょう。別居の子は、運転者年齢条件にかかわらず補償されます。

運転者限定を設定している場合には、子どもに法律上の婚姻歴があるかないかという点に注意しましょう。

等級の引き継ぎやセカンドカー割引に
関する注意点

ご自身の自動車保険の等級を誰かに引き継ぎたいとき、もしくはご自身の自動車保険を使って誰かにセカンドカー割引を適用させたいときには、その対象が同居の親族であることが条件となります。
もし、結婚や進学、就職を機に新しく子どもがお車を購入する予定だが、別居する予定がある場合には、同居している間に等級引き継ぎや自動車保険加入の手続きを行いましょう。そうすることで、等級の引き継ぎができたり、セカンドカー割引を適用させたりすることができます。いずれも、活用すると保険料を大きく抑えることができる場合もありますので、忘れずに手続きするようにしましょう。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員