自動車保険の3等級ダウン事故とは?1等級ダウン事故、ノーカウント事故との違いや保険料を解説

2024年3月8日(2024年8月9日更新)

自動車保険は、事故を起こしてしまったときの損害を補償する心強い存在です。しかし、事故の際に自動車保険を利用すると、自動車保険の等級がダウンし、翌年の保険料が上がる点には注意が必要です。
ここでは、自動車保険の等級制度、3等級ダウン事故や1等級ダウン事故、ノーカウント事故の違いを解説します。自動車保険を利用したときの翌年の保険料への影響や、自動車保険を利用するか、自己負担で対応するかの判断についての考え方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

自動車保険には等級制度がある

自動車保険の保険料を決める要素の一つに「等級制度」があります。
等級は、ドライバーの事故実績などを反映して決定されるものです。
事故による保険料への影響を知るうえで、まずは等級制度について理解しましょう。

ノンフリート等級別料率制度

「等級制度(ノンフリート等級別料率制度)」とは、前契約の有無や、前契約の事故の件数・種類などにより、次契約に適用する等級(1~20等級)と割増引率が決定され、保険料を割引・割増する制度です。等級は、1等級から20等級まであり、20等級が最も保険料が安くなります。

初めてお車を保有するなど、今まで自動車保険に加入したことがない場合は、原則として6等級が適用されます。なお、2台目のお車を購入したときや、同居している子どもがお車を購入したときなどで一定の条件を満たした場合には、セカンドカー割引が適用され、7等級からのスタートとなります。

翌年の自動車保険の継続時に、等級は変わります。1年間無事故の場合は、翌年の等級は1つ上がります(ただし、20等級が上限です)。

事故有係数適用期間

「事故有」の割増引率を適用する期間を「事故有係数適用期間」といいます。事故有係数適用期間は0年から6年まであり、0年の場合は「無事故」の割増引率、1~6年の場合は「事故有」の割増引率を適用します。

事故の種類によって自動車保険の等級の下がり方は異なる

事故にあって保険金を請求した場合、事故の種類によって翌年の等級・事故有係数適用期間は異なります。
以下では、&e(アンディー)における3つの事故の種類とそれぞれに適用される翌年の等級・事故有係数適用期間を解説します。

ノーカウント事故

ノーカウント事故は、事故にあって保険金を請求した場合でも、翌年の等級・事故有係数適用期間の算出に影響がない事故です。事故がない場合と同様に翌年度の等級は1等級上がり、翌年の事故有係数適用期間に年数は加算されません。

ノーカウント事故は次のいずれかのみの事故、または、次のものの組み合わせのみの事故です。(以下は&eにおける事例です。)

  • 対人賠償の臨時費用にかかわる事故
  • 人身傷害にかかわる事故
  • 人身傷害の他車搭乗中および車外自動車事故補償特約にかかわる事故
  • 入院時諸費用特約にかかわる事故
  • 無過失特約によりノーカウント事故として取り扱われる事故
  • 事故時レンタカー特約にかかわる事故
  • 事故時帰宅・宿泊特約にかかわる事故
  • 被害者救済特約にかかわる事故
  • 弁護士特約にかかわる事故
  • ファミリーバイク特約にかかわる事故
  • 個人賠償特約にかかわる事故

例えば、ご自身が乗車中の事故でケガをして、人身傷害の保険金を請求した場合はノーカウント事故に該当します。

また、個人賠償特約に加入していて、自動車事故以外の日常生活の事故で第三者にケガをさせ、保険金を請求した場合も、翌年度の等級・事故有係数適用期間の算出に影響はありません。

1等級ダウン事故

1等級ダウン事故は、事故にあって保険金を請求した場合に翌年の等級が事故1件につき1等級下がる事故です。1等級ダウン事故にあって保険金を請求した場合、翌年の事故有係数適用期間が事故1件につき1年加算されます。

1等級ダウン事故に該当する事故は、車両保険にかかわる事故のうち、以下のいずれかの事故、またはそれらと「ノーカウント事故」の組み合わせの事故です。(以下は&eにおける事例です。)

  • 火災、爆発、窓ガラス破損※1
  • 盗難
  • 騒じょうや労働争議に伴う暴力行為または破壊行為
  • 台風、たつ巻、洪水、高潮
  • 落書き
  • いたずら※2
  • 飛来中または落下中の他物との衝突
  • 上記の他、偶然な事故※3

1等級ダウン事故は、所有者や運転者の過失がなく、防ぐのが極めて困難な事故が該当します。例えば、飛来物落下によりガラスが破損した場合、お車が盗難された場合など偶発的な原因の事故です。

1等級ダウン事故で保険金を請求した場合、現在の等級が15等級の契約では、翌年度の等級が14等級になります。

※1

他物(飛来中または落下中の物を除きます。)との衝突・接触、転覆、墜落によるものを除きます。

※2

ご契約のお車の運行によるものおよび他のお車との衝突・接触によるものを除きます。

※3

他物との衝突・接触、転覆、墜落によるものを除きます。

3等級ダウン事故

3等級ダウン事故は、事故にあって保険金を請求した場合に翌年の等級が事故1件につき3等級ダウンする事故です。ノーカウント事故と1等級ダウン事故以外の事故は、3等級ダウン事故に分類されます。3等級ダウン事故にあって保険金を請求した場合、翌年の事故有係数適用期間が事故1件につき3年加算されます。

例えば、お車の走行中に他の自動車と交差点で衝突した場合、ガードレールや電柱にお車をぶつけた場合などは、3等級ダウン事故になります。

なお、たとえ相手方の過失割合が高い事故であっても「3等級ダウン事故」となる点に注意しましょう。

等級が下がると自動車保険料はいくら上がるか

さて、前述の通り事故で自動車保険を利用すると、ノーカウント事故でない場合、翌年の等級は1等級または3等級下がり、「事故有」の割増引率が適用されます。

では、保険料はいくら上がるのでしょうか。等級やその他の条件により保険料は変わりますが、例として、15等級の人が3等級ダウン事故を起こした場合と、事故を起こさなかった場合の&eでの保険料を見てみましょう。

保険料の算出条件・補償内容の詳細を見る

上記保険料の算出条件

  • 運転免許証の色:ゴールド
  • 使用目的:主に日常・レジャー
  • 主な使用地:宮城県
  • 運転者限定:夫婦限定
  • 運転者年齢条件:30歳以上補償
  • 前年走行距離区分:7,000km超10,000km以下
  • 料率クラス:車両8対人12対物10傷害11
  • 等級:上図記載のとおり

【補償内容(保険金額など)】

  • 対人賠償:無制限
  • 対物賠償:無制限
  • 対物超過特約:あり
  • 人身傷害:3,000万円(車内のみ補償)
  • 車両保険のタイプ:一般
  • 車両保険:現在の契約 95万円、翌年 90万円、2年後 85万円、3年後 80万円、4年後 75万円
  • 車両保険免責金額(1回目-2回目以降):5万円-10万円
  • 車両全損時諸費用特約:あり
  • 弁護士特約:あり
  • 他車運転特約:あり
  • 被害者救済特約:あり
  • 無過失特約:あり
  • インターネット割引:あり

【その他の算出条件】

  • 主に運転される方(記名被保険者):現在の契約 32歳、翌年 33歳、2年後 34歳、3年後 35歳、4年後 36歳
  • 用途・車種:自家用普通乗用車
  • 初度登録年月:平成26年1月
  • 保険開始日(始期日):2024年4月1日
  • 保険期間:1年間
  • 前契約事故:なし
  • 前契約保険会社:当社以外
  • 払込方法:一括払
(注)

表示の保険料は、保険開始日が2024年4月1日の&eにおける保険料です。
商品改定などにより、保険料が変更となる場合があります。

3等級ダウン事故の場合は、「事故無」の等級に戻るまで3年間かかります。この例では、翌年からの4年間の保険料が、約1.4倍になることがわかります。

自動車保険を利用するか、自己負担で対応するか?

このように、事故を起こしてしまった際に自動車保険を利用すると、翌年以降の保険料が高くなることがあります。
一方、万一の事故に備える自動車保険ではありますが、保険料がどれだけ高くなるかによっては、保険を利用せずに自己負担で対応するという選択肢もあります。どのような場合に自動車保険を利用するか、自己負担で対応するかの考え方をご紹介します。

自動車保険を利用した方がよい場合

等級ダウンによる保険料の上昇が、事故による損害額(ケガの治療費や自動車の修理費、相手方への賠償金など)を下回る場合は自動車保険を利用した方がよいでしょう。自動車保険を利用することで、相手方との交渉を保険会社に任せられるというメリットもあります。
また、車が大破するような事故や、相手方が死傷するような重大な事故の場合は、特に損害額が高額となります。このような場合は、自動車保険を利用した方がよいでしょう。

自己負担で対応した方がよい場合

一方、等級ダウンによる保険料の上昇が、事故による損害額を上回る場合は、自己負担で対応するという選択肢もあります。
例えば、自損事故や、飛び石による車両の損害などの場合は、相手方との交渉が不要で、損害も軽微で済むこともあります。このような場合は、自己負担で対応すると、翌年以降の等級が下がらず保険料が上昇する事態を避けることができます。

自動車保険を利用するかどうか迷った場合は、まずは保険会社に相談してみるのがよいでしょう。事故についての連絡をし、相談するだけでしたら等級がダウンすることはなく、保険料が上がることもありません。
上記のような保険料シミュレーションも行ってくれるので、それも参考にするとよいでしょう。先ほどの保険料の例はあくまでも例であり、実際の保険料の変動は各種条件により異なります。保険会社に相談したうえで最終判断を行うことをおすすめします。

事故を起こしたときの手続き手順

事故を起こしたときは、慌てずに落ち着いて対処しましょう。事故時の大まかな流れは次のとおりです。

  1. ケガ人を救護する
  2. 車を安全な場所へ移動させる
  3. 警察へ届け出る
  4. 相手方の情報を確認する
  5. 事故の状況を記録する
  6. 自動車保険の契約先保険会社に連絡する

事故の当事者となった場合、道路交通法に定められた義務を果たす必要があります。ケガ人の救護や危険防止のための措置を講じましょう。

その後、警察(110番)へ報告します。警察への報告は、人身事故だけでなく物損事故や自損事故でも必要な点に注意してください。

相手方がいる場合は、相手方の氏名や住所、連絡先や相手車両の登録番号(車両ナンバー)などを確認して、事故の発生状況や目撃者の存在を確認します。保険会社に連絡する前に、相手方と責任割合や金額の約束などをしないことも重要です。

事故の当事者となった場合は、小さな事故でも保険会社に連絡しましょう。&eでは、お電話だけでなく、アプリやWebサイトからの連絡が可能です。

まとめ

事故を起こして保険金を請求した場合、通常、翌年の自動車保険の等級が3等級ダウンします。ただし、ノーカウント事故や1等級ダウンする事故もあるため、違いを把握しましょう。

翌年の等級が下がった場合、事故有の割増引率が適用され、保険料が上がります。自動車保険の利用と自己負担での対応を比較・検討し、ご自身の状況に合わせて選択しましょう。

事故を起こした際は、速やかなケガ人の救護や安全確保措置が大切です。警察への届出や相手方の確認とともに、契約している保険会社へ忘れずに連絡してください。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員