正しく使えていますか?「補償」の意味、正しい使い方。「保証」「保障」との違いとは

2024年3月8日

みなさんは、日常生活で「ほしょう」という言葉を目にする機会も多いのではないのでしょうか。「補償」は、損害保険で使われることが多い言葉です。「ほしょう」と読む単語には、「保障」「保証」もありますが、それぞれ意味が異なります。保険の契約書類などで使われる重要な用語ですが、正確に使い分けられているでしょうか。
主に、自動車保険などの損害保険には「補償」、終身保険や医療保険などの生命保険会社が扱う保険には「保障」を用います。今回は、「補償」の意味や「保障」「保証」との違い、正しい使い方をご説明します。

「補償」の意味合いとは

「補償」は、「補ってつぐなう」「つぐなって埋め合わせる」という意味をもつ言葉です。財産や健康上の損害が生じ、金銭などでその損害を補うときに使われます。使用例は、以下のとおりです。

  • 労働者災害補償保険(労災保険)
  • 補償金
  • 損害補償

「補償」は主に損害保険で使われる

「補償」は、主に損害保険で使われます。損害保険とは、偶然の事故によって生じた損害額を補填する保険です。
損害保険では、実際に被った損害額が保険金として支払われる「実損払い」が基本です。そのため、生じた損害の額を埋め合わせるという意味で「補償」が使われます。

主な損害保険は、以下のとおりです。

  • 自動車保険
  • 火災保険
  • 地震保険
  • 傷害保険
  • 所得補償保険
  • 個人賠償責任保険

例えば、自動車保険では、「補償内容」や「補償範囲」、「補償プラン」などの言葉が使われます。
また、すべての自動車に加入が義務付けられている「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」でも、「補償内容」や「休業損害補償」などの言葉が使われています。休業損害補償とは、交通事故によるケガなどで仕事を休んだ場合に、得られる予定だった収入が「補償」されるものです。

そのほか、スマートフォンの故障や水没、盗難などのトラブルが起きた際に交換や修理などが受けられるサービスでも「補償」が使われています。

「補償」と「賠償」の違い

「補償」と似た言葉に、「賠償」があります。いずれも損害を補填する意味では同じですが、「賠償」は違法な行為によって生じた損害を補償するものであり、適法な行為によって生じた損害をてん補する「補償」とは異なります。

「補償」と「賠償」の違いも正しく理解しておきましょう。

「補償」「保障」「保証」の
それぞれの違いとは

「補償」「保障」「保証」は、すべて「ほしょう」と読む言葉です。保険の商品案内や契約書などで目にすることが多い用語ですが、それぞれ意味が異なります。主な違いを確認しましょう。

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項目 補償 保障 保証
意味 補ってつぐなう、
つぐなって埋め合わせる
ある状態がそこなわれないよう
保全する
間違いがないと約束し、
責任をもつ
使われる保険分野 損害保険 生命保険 年金保険
用語例
  • 労働者災害補償保険(労災保険)
  • 補償金
  • 社会保障
  • 安全保障
  • 最低限の生活保障
  • 保証書
  • 保証人
  • 保証金

保険分野では、「補償」は第2分野(損害保険)、「保障」は第1分野(生命保険)に使われるのが一般的です。
ただし、生命保険会社と損害保険会社がともに扱う第3分野の保険(医療保険やがん保険、介護保険など)では、「補償」と「保障」が混在しています。例えば、医療保険の場合、一般的に生命保険が扱う保険には「保障」、損害保険会社が扱う保険には「補償」が使われています。

保険金の給付方法などに応じて使い分けられているため、3つの「ほしょう」の意味を正しく理解することが大切です。「保障」と「保証」の意味を詳しく解説します。

「保障」の意味

「保障」は、「安全を請け負うこと」「ある状態がそこなわれないよう保全する」などの意味をもちます。「保障」を使った代表的な用語は、以下のとおりです。

  • 社会保障
  • 安全保障
  • 最低限の生活保障

「保障」が使われている身近な用語は、私たち国民の安心や生活の安定を守るための「社会保障制度」です。また、国家の安全を守る「安全保障」や、憲法第25条にもとづく「最低限の生活保障」にも使われています。

「保証」の意味

「保証」は、「間違いがないと約束し、責任を持つこと」という意味をもつ用語です。「品質を保証する」、「身の安全を保証する」のように使われます。「保証」を使った主な用語は以下のとおりです。

  • 保証人
  • 保証書
  • 保証金

「保障」「保証」が使われる
シーンはどんなとき

それでは、「保障」や「保証」はどのようなシーンで使われるのでしょうか。以下で、それぞれ詳しく解説します。

「保障」が使われるシーン

「保障」は、主に生命保険会社が扱う保険で、「死亡保障」「医療保障」というように使われます。具体的には、以下のような保険です。

  • 終身保険
  • 定期保険
  • 医療保険
  • がん保険
  • 介護保険

生命保険は、実際の損害額が支払われる損害保険とは違い、もしものことが起きたときにあらかじめ契約で決めた保険金・給付金額が支払われる仕組みです。不測の事態に備え、ご自身や家族の生活を保全するための手段であるため、「保障」が用いられます。

なお、クレジットカードの不正利用に備える制度の名称(会員保障制度)にも、「保障」が使われている場合があります。ただし、本制度は不正利用による実際の損害額が「補償」される損害保険の仕組みです。そのため、「不正利用補償」などと呼ばれる場合もあります。

「保証」が使われるシーン

「保証」は、自動車や家電などを購入した後のサポートなどでよく使われます。
例えば、自動車や家電などを購入したときに受け取る「保証書」は、製品が不完全であったときに修理や取り換えをすることを「保証」する旨を記載した書類です。「メーカー保証」や「延長保証」などの用語もよく使われます。
また、賃貸契約を結ぶ際やローンを利用する際に使われるのが「保証人」です。保証人は、主たる債務者が返済しない場合に、その方に代わってお金を返済することを約束(保証)する方を指します。

保険分野で「保証」が使われるのは、主に年金保険です。例えば、個人年金保険には「保証期間付終身年金」という言葉があります。保証期間付終身年金は、個人年金保険で受け取る年金の種類の一つで、「保証期間中、生死にかかわらず年金を受け取れる」仕組みです。
「保証期間中は、被保険者が生きていても亡くなっても年金を支払うことを約束し、責任をもつ」という意味で「保証」が使われます。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員