自動車保険の等級は家族間で引き継ぎ可能!必要条件や注意点も解説
2024年3月8日(2024年8月16日更新)
自動車保険の保険料は、等級に応じて割引・割増されます。等級は保険会社を乗り換えた場合であっても引き継ぎができることは知られていますが、家族間で等級の引き継ぎができることもご存知でしょうか?ここでは、自動車保険の等級の引き継ぎについて解説します。
自動車保険の等級とは?
自動車保険は、事故歴に応じて、翌年の契約に適用する等級(ノンフリート等級)が決まります。等級は1等級から20等級まであり、等級に応じて保険料が割引・割増されます。初めて自動車保険を契約する場合は6等級からスタートし、2台目以降の車を新たに契約する場合はセカンドカー割引が適用されれば7等級からスタートします。
1年間事故がなければ翌年は1等級上がり、事故を起こして保険金を請求した場合は、1事故につき1等級または3等級下がります(事故の種類により、保険金を請求しても事故としてカウントされない場合もあります)。
6等級からスタートした場合、事故がなくても、上限の20等級に達するまで最短で14年かかります。
自動車保険は条件付きで家族間で引き継ぎ可能
親の車を子どもが相続するときや、配偶者の車を譲り受けて乗るときなど、
自動車保険の等級を引き継ぎたい場合もあるでしょう。
自動車保険の等級は引き継ぎが可能ですが、条件があります。大きく分けて続柄の条件と期間の条件があり、引き継ぎが認められるのは各条件を満たす場合に限定されます。
以下でそれぞれの条件を詳しく解説します。
引き継ぎ可能な続柄
現在の主に運転される方(記名被保険者)から見て、新しい主に運転される方(記名被保険者)を以下に変更する場合、等級を引き継ぐことができます。
- 配偶者
- 同居している親族
- 配偶者と同居している親族
引き継ぎ対象は上記対象のみに限定されています。配偶者以外の親族とは、6親等内の血族・3親等内の姻族をいいます。
子どもや親などの親族は、現在の主に運転される方(記名被保険者)またはその配偶者と同居している場合のみ等級を引き継ぐことができます。いずれとも別居している場合は、等級を引き継ぐことができません。
配偶者だけは、別居・同居を問わず等級の引き継ぎが可能です。例えば単身赴任で別居している場合でも、等級をそのまま引き継ぐことができます。
引き継ぎ可能な期間
保険の乗り換えで自動車保険の等級を引き継ぐ場合、新しい自動車保険の保険開始日は、前契約(もしくは現在の契約)の満期日・解約日の翌日から起算して7日以内にスタートしなければなりません。
定められた期限までに保険を開始できなかった場合は、等級の引き継ぎが認められない可能性があります。契約に関する手続きの不備や保険料の支払い漏れには注意しましょう。
新しい自動車保険の始期日までに8日以上の日数が空いてしまう場合は、保険会社に「中断証明書」の発行を依頼し、保管しておきましょう。
中断証明書には、等級や事故件数など自動車保険の契約に関する情報が記載されます。中断証明書を取得しておけば、旧契約の満期日(解約の場合は解約日)または、出国日のいずれか遅い日の翌日から起算して10年以内の日に新契約の保険を開始すれば、新しい保険契約に等級を引き継げます。
ただし、等級や車の状況などにより発行できない場合があります。中断証明書を発行するための条件は保険会社により異なるため、取得を検討している場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
なお、デメリット等級と呼ばれる5等級以下の場合は、7日を過ぎても等級がリセットされません。13ヶ月間は記録が残るため、新しい保険契約でも前の契約の等級が引き継がれます。
家族間の等級引き継ぎでこんなメリットが!
等級は、家族間で引き継ぐことができます。夫婦間はもちろん、同居していれば親子間、兄弟間などでも引き継ぎが可能です。家族間の等級引き継ぎを上手に活用すると、保険料を節約できる場合があります。
実際に、イーデザイン損保の自動車保険&e(アンディー)での例を見てみましょう。
- 同居している子どもが自動車を購入し、新たに自動車保険を契約する場合
家族間での等級引き継ぎを利用して、子どもが親の等級を引き継いで契約し、親は新規の等級で契約することで、トータルの自動車保険料を大幅に節約できるかもしれません。
以下の図をご覧ください。
保険料の算出条件・補償内容の詳細を見る
上記保険料の算出条件
(親)
- 運転免許証の色:ゴールド
- 使用目的:主に日常・レジャー
- 主な使用地:宮城県
- 運転者限定:夫婦限定
- 運転者年齢条件:30歳以上補償
- 前年走行距離区分:7E等級の場合は新規契約区分、
20等級の場合は7,000km超10,000km以下 - 料率クラス:車両8対人12対物10傷害11
- 等級:7E等級(事故有係数適用期間:0年) 20等級(事故有係数適用期間:0年)
【補償内容(保険金額など)】
- 対人賠償:無制限
- 対物賠償:無制限
- 対物超過特約:あり
- 人身傷害:3,000万円(車内のみ補償)
- 車両保険のタイプ:一般
- 車両保険:95万円
- 車両保険免責金額(1回目-2回目以降):5万円-10万円
- 車両全損時諸費用特約:あり
- 弁護士特約:あり
- 他車運転特約:あり
- 被害者救済特約:あり
- 無過失特約:あり
- セカンドカー割引:7E等級の場合はあり、20等級の場合はなし
- インターネット割引:あり
【その他の算出条件】
- 主に運転される方(記名被保険者):52歳
- 用途・車種:自家用普通乗用車
- 初度登録年月:平成26年1月
- 保険開始日(始期日):2024年4月1日
- 保険期間:1年間
- 前契約事故:20等級の場合のみなし
- 前契約保険会社:20等級の場合のみ当社以外
- 払込方法:一括払
(子ども)
- 運転免許証の色:グリーン
- 使用目的:通勤・通学
- 主な使用地:宮城県
- 運転者限定:本人限定
- 運転者年齢条件:21歳以上補償
- 前年走行距離区分:7B等級の場合は新規契約区分、
20等級の場合は7,000km超10,000km以下 - 料率クラス:車両2対人1対物1傷害1
- 等級:7B等級(事故有係数適用期間:0年) 20等級(事故有係数適用期間:0年)
【補償内容(保険金額など)】
- 対人賠償:無制限
- 対物賠償:無制限
- 対物超過特約:あり
- 人身傷害:3,000万円(車内のみ補償)
- 車両保険のタイプ:一般
- 車両保険:150万円
- 車両保険免責金額(1回目-2回目以降):5万円-10万円
- 車両全損時諸費用特約:あり
- 弁護士特約:あり
- 他車運転特約:あり
- 被害者救済特約:あり
- 無過失特約:あり
- セカンドカー割引:7B等級の場合はあり、20等級の場合はなし
- インターネット割引:あり
【その他の算出条件】
- 主に運転される方(記名被保険者):21歳
- 用途・車種:自家用軽四輪乗用車
- 初度登録年月:平成30年1月
- 保険開始日(始期日):2024年4月1日
- 保険期間:1年間
- 前契約事故:20等級の場合のみなし
- 前契約保険会社:20等級の場合のみ当社以外
- 払込方法:一括払
表示の保険料は、保険開始日が2024年4月1日の&eにおける保険料です。
商品改定などにより、保険料が変更となる場合があります。
このケースでは、親子間で等級を入れ替えない場合と入れ替えた場合の差額は21,260円。トータルの保険料にこんなに違いが出るのは、等級の違いの他、主に運転される方(記名被保険者)の年齢と「年齢条件」のためです※。
若い方ほど事故を起こす確率が高いため、保険料が高くなります。子どもの契約では年齢条件は「年齢問わず補償」や「21歳以上補償」になり、また、新規の等級の場合は割引率が低いため、どうしても保険料が高くなってしまいます。
そんな場合でも親の等級が高ければ、親の等級を子どもが引き継ぎ、親が新規の等級で保険を契約する(等級を入れ替える)ことで、親の「年齢条件」の効果も加わって自動車保険の総額を抑えることができるのです。
ただし、等級の入れ替えはいつでもできるわけではありません。自動車を新たに取得したなどのタイミングでのみ、等級の入れ替えが可能です。例えば、子どもが自動車を新たに取得してから数年後に親の20等級と子どもの10等級を入れ替える、といったことはできないため、タイミングを逃さないようにしましょう。
なお、今回のケースでは「セカンドカー割引」を適用し、新規でも7等級からスタートしていますが、親の等級が11等級以上であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。条件を満たさない場合は6等級からスタートします。
年齢条件については、こちらのコラムをご覧ください。
他にも次のようなケースで、家族間の等級引き継ぎで保険料を節約できる場合があります。
- 親子で乗っていた自動車に、子どもだけが乗るようになる場合
- 親が自動車に乗るのをやめて車を手放し、子どもが新しい車を購入して乗るようになる場合
自動車保険の等級が引き継げないケース
家族や期間の条件をクリアしていても、場合によっては自動車保険の等級が引き継げないケースがあります。
家族間でも等級を引き継げない例を解説します。
ノンフリート等級の情報交換制度を利用していない共済組合の場合
ノンフリート等級の情報交換制度とは、ノンフリート等級別料率制度を適切に運用し、保険会社を変更しても以前の事故歴などを正しく保険料に反映するため、前契約や他のお車の自動車保険に関する情報などについて、保険会社間で確認する制度です。
自動車保険の事業を運営するのは保険会社や共済組合ですが、一部の共済組合では、ノンフリート情報交換制度を利用していません。
情報交換制度を利用していない共済組合から自動車保険を乗り換える場合、乗り換え先の保険会社が被保険者の情報を把握できないため、等級の引き継ぎが認められないケースがあります。
また、引き継ぎが可能であっても、無事故の証明書類を提出しなければならないケースもあります。
共済組合からの引き継ぎは、保険会社によって異なる条件が設定されています。共済組合の自動車保険を乗り換えたい場合は、前の契約の等級を引き継げるかどうか、乗り換え先の保険会社に事前に確認するとよいでしょう。
保険会社に解除された場合
保険料の未払い・告知義務違反・通知義務違反など、被保険者の責に帰すべき事由が発生した場合、保険会社は保険契約を解除できます。
保険会社により解除された場合は、新しい保険契約への7等級以上の等級の引き継ぎができません。保険料は期日までにお支払いいただき、必要な告知や通知はルールにしたがって行いましょう。
まとめ
子どもが自動車を購入して新たに自動車保険を契約する場合など、家族間の等級引き継ぎを上手に活用すると、保険料を節約できる場合があります。等級の引き継ぎの手続き自体は難しいものではありませんので、加入している保険会社のコールセンターや代理店に「等級を引き継ぎたい」と相談してみましょう。
監修:新井 智美
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。
資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員