自動車保険は年末調整の対象外!保険料を経費計上できる
ケースも紹介

2024年9月12日

支払った保険料は、保険の種類によってはその年の年末調整で控除対象として申請できることがあります。しかし、自動車保険の保険料は控除対象ではないため、年末調整で申請できません。
本記事では、年末調整で控除対象となる保険料について解説します。また、自動車保険の保険料を経費として計上できるケースについても紹介しますので参考にしてください。

自動車保険の保険料は年末調整で控除申請できない

勤務先から給与を受け取っている方なら、毎年、年末調整をしているのではないでしょうか。各種保険料や住宅ローンなどの控除証明書を提出して手続きをすると、所得税や住民税を節税できます。

地震保険や生命保険などの保険料は年末調整の対象ですが、自動車保険の保険料は対象ではありません。対象となる保険料については勤務先から指定された期間内に控除証明書を提出し、正しく年末調整の手続きをしましょう。

年末調整で控除申請が
可能な保険料

年末調整で控除申請が可能な保険料には、次のものがあります。

  • 生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料
  • 地震保険料
  • 小規模企業共済等掛金
  • 国民年金保険、国民年金基金などの保険料

これらは所得控除の対象ですので控除申請を忘れずに実施することで、課税所得金額を減らし、所得税・住民税を節税できます。各保険料の控除額について見ていきましょう。

生命保険料

生命保険を契約し、生命保険料を支払っている場合は、生命保険料控除が申請できます。新契約(2012年1月1日以後に締結した保険契約など)については「新生命保険料控除」として申請でき、控除額は最大4万円です。控除額の計算方法は以下をご覧ください。

保険期間が5年未満の生命保険などの中には、控除の対象とならないものもあるため、注意しましょう。

<新生命保険料控除額>

年間の支払い保険料等 控除額
20,000円以下 支払い保険料等の全額
20,000円超
40,000円以下
支払い保険料等×1/2+10,000円
40,000円超
80,000円以下
支払い保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除

一方、旧契約(2011年12月31日以前に締結した保険契約など)については「旧生命保険料控除」として申請でき、控除額は最大5万円となります。控除額の計算方法は以下の通りです。

<旧生命保険料控除額>

年間の支払い保険料等 控除額
25,000円以下 支払い保険料等の全額
25,000円超
50,000円以下
支払い保険料等×1/2+12,500円
50,000円超
100,000円以下
支払い保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除

新契約と旧契約の両方の生命保険に加入している場合は、旧契約の支払い保険料等の金額で控除額が決まります。次の方法で控除額を計算してください。

<新契約・旧契約に両方加入している場合の控除額>

旧契約の支払い保険料等 控除額
60,000円超 <旧生命保険料控除額>に基づいて計算した控除額(最高50,000円)
60,000円以下 <新生命保険料控除額>に基づいて計算した控除額と<旧生命保険料控除額>に基づいて計算した控除額の合計額(最高40,000円)

参考:国税庁|No.1140 生命保険料控除

介護医療保険料

民間保険会社の医療保険や介護保険に2012年1月1日以後に契約し、保険料を支払っている場合は、「介護医療保険料控除」を年末調整で申請できます。控除額の計算方法は以下をご覧ください。

<介護医療保険料控除額>

年間の支払い保険料等 控除額
20,000円以下 支払い保険料等の全額
20,000円超
40,000円以下
支払い保険料等×1/2+10,000円
40,000円超
80,000円以下
支払い保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除

個人年金保険料

個人年金保険料を支払っている場合は、新契約(2012年1月1日以後に締結した保険契約など)については「新個人年金保険料控除」、旧契約(2011年12月31日以前に締結した保険契約など)については「旧個人年金保険料控除」として年末調整で申請できます。

控除額の計算方法は、生命保険料と同様です。新契約の場合、旧契約の場合、新契約と旧契約の両方がある場合の3つのパターンのどれにあてはまるか確認のうえ、控除額を計算してください。

<新個人年金保険料控除額>

年間の支払い保険料等 控除額
20,000円以下 支払い保険料等の全額
20,000円超
40,000円以下
支払い保険料等×1/2+10,000円
40,000円超
80,000円以下
支払い保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除

<旧個人年金保険料控除額>

年間の支払い保険料等 控除額
25,000円以下 支払い保険料等の全額
25,000円超
50,000円以下
支払い保険料等×1/2+12,500円
50,000円超
100,000円以下
支払い保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除

<新契約・旧契約に両方加入している場合の控除額>

旧契約の支払い保険料等 控除額
60,000円超 <旧個人年金保険料控除額>に基づいて計算した控除額(最高50,000円)
60,000円以下 <新個人年金保険料控除額>に基づいて計算した控除額と<旧個人年金保険料控除額>に基づいて計算した控除額の合計額(最高40,000円)

参考:国税庁|No.1140 生命保険料控除

なお、生命保険料と介護医療保険料、新個人年金保険料の各控除額の合計額を「生命保険料控除額」と呼び、生命保険料控除額は最高12万円に制限される点に注意が必要です。例えば、生命保険料の控除額が5万円、介護医療保険料の控除額が4万円、新個人年金保険料の控除額が4万円の場合、生命保険料控除額は13万円ではなく12万円になります。

地震保険料

地震保険に加入している場合は、年末調整で「地震保険料控除」の申請ができます。控除額は最大5万円です。

2007年1月より、地震保険料控除制度が新設されたことにより、従来の損害保険料控除制度が廃止されました。
そのため、2006年12月31日までに締結した損害保険契約(2007年1月1日以降に契約内容を変更していないものに限る)があるときは、経過措置として旧長期損害保険料として控除申請できます。控除額は最大15,000円ですが、地震保険料による控除額と合算して5万円が控除上限額となる点に注意が必要です。

保険料の種類 年間の支払い保険料の合計 控除額
地震保険料 50,000円
以下
支払い金額の
全額
50,000円超 一律50,000円
旧長期損害
保険料
10,000円
以下
支払い金額の
全額
10,000円超20,000円以下 支払い金額×1/2+5,000円
20,000円超 15,000円
地震保険料・旧長期損害保険料の両方がある場合 各控除額の合計額(最高50,000円)

出典:国税庁|No.1145 地震保険料控除

小規模企業共済等掛金

以下のいずれかの掛金がある場合は、小規模企業共済等掛金として年末調整で控除申請できます。

  • 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金もしくは個人型年金加入者掛金
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約の掛金
  • 地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金

控除額は、上記の掛金全額です。

国民年金保険、
国民年金基金などの保険料

国民年金保険料や厚生年金保険料、健康保険料などの社会保険料については、勤務先で控除申請をしてもらえますが、勤務先がない期間があるときは、国民年金保険料や国民年金基金などをご自身で支払っている可能性があります。

もし年内にご自身で国民年金保険料などの保険料を支払ったときは、年末調整で控除申請をしましょう。なお、控除額は支払った保険料全額です。

自動車保険の保険料を経費計上できるケース

自動車保険の保険料は年末調整の対象ではありません。しかし、事業をしている場合なら、自動車保険料を経費として計上し、確定申告により課税所得金額を減らせることがあります。

事業の経費として計上できる自動車保険は、任意保険と自賠責保険の両方です。もし事業にお車を使っている場合なら、忘れずに自動車保険料を経費計上しておきましょう。

まとめ

自動車保険料は年末調整で控除申請できませんが、地震保険料や生命保険料、医療保険料などの保険料は年末調整が可能です。忘れずに申請して、節税につなげましょう。

また、事業をしている場合なら、自動車保険の保険料を経費計上できることがあります。確定申告を行うことで課税所得額が減り、節税につなげられます。事業用のお車で加入した保険については、任意保険・自賠責保険のいずれも経費計上が可能です。忘れずに計上し、確定申告するようにしてください。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員