自動車保険の1年契約と3年契約(長期契約)の違いを解説!

2024年3月8日

自動車保険は1年契約しかできない…と思っていませんか?たしかに1年契約の商品が多いですが、実は保険会社によっては2年契約・3年契約などの長期契約の商品もあります。では、1年契約と長期契約では何が違うのか、長期契約のメリットとデメリットについて解説します。

自動車保険の長期契約とは

契約期間が2年、3年、もしくはそれ以上の商品を指します。
長期契約の自動車保険は、1年契約の自動車保険と比較して、契約期間以外にも異なる点がいくつかあります。まずは違いについてみていきましょう。

1年契約と3年契約の違い

ここでは、例として3年契約の自動車保険をとりあげます。
1年契約と3年契約で異なる点としては、取り扱っている保険会社、等級の進み方、保険料の3つがあげられます。

取り扱っている保険会社

1年契約と3年契約では、取り扱っている保険会社が異なります。
1年契約は代理店型自動車保険、ネット自動車保険のいずれの保険会社でも取り扱っていますが、3年契約は代理店型の保険会社のみで取り扱っています。
なお、代理店型自動車保険、ネット自動車保険の保険会社には以下のような違いがあります。
代理店型の自動車保険の場合、お客さまと保険会社のやりとりには代理店が介在しますが、ネット自動車保険では、お客さまと保険会社がインターネットやお電話などを通して直接やりとりを行いますので、申し込み・更新などの手続き方法などが異なります。また、ネット自動車保険は中間コストが圧縮される分、代理店型の自動車保険と比較して、一般的に保険料が安くなる傾向があります。

等級の進み方

1年契約と3年契約で最も異なる点は、等級の進み方です。
まずは、3年間事故がなかった場合をみてみましょう。
1年契約の場合、1年間無事故であれば翌年の契約で1等級上がります。例えば、今年の契約が10等級で1年間無事故だった場合、翌年の契約は11等級になります。
3年契約の場合は、無事故であれば契約期間中の3年間は同じ等級のままです。その代わり、3年間経過後に契約を更新すると、等級が一気に3つ上がります。例えば、今年の契約が10等級であれば来年も再来年も10等級のままですが、3年間経過後にはいきなり13等級になる、といった仕組みです。
なお、等級の進み方には違いがありますが、事故がなかった場合はどちらの契約でも以下の表のように3年間経過後の等級は同じになります。

1年目 2年目 3年目 4年目
1年契約 10等級 11等級 12等級 13等級
(同じになる)
3年契約 10等級

では、事故があった場合の等級の進み方はどうでしょうか?
ここでは、1年目に他の車に衝突して車両保険を請求したケース(3等級ダウン事故のケース)で考えてみましょう。
1年契約の場合は、翌年の契約で3等級下がります。その後、無事故であれば1年で1等級ずつ上がります。例えば、10等級のときに事故があると、次の更新時には7等級になり、3年間経過後に9等級まで上がるといった具合です。
3年契約の場合、事故があっても契約期間中の3年間は等級は変わりません。3年間経過後に次の計算式にあてはめて計算が行われ、等級が変化します。例えば、今年の契約が10等級であれば、3年間経過後は9等級となります。

等級+{契約年数−(3等級ダウン事故件数+1等級ダウン事故件数)}−(3等級ダウン事故件数×3+1等級ダウン事故件数×1)

3年契約で事故があったときには、このように等級の計算が複雑になってしまいますが、上記の例ではどちらの契約でも以下の表のように3年間経過後の等級は同じになります。

1年目 2年目 3年目 4年目
1年契約 10等級 7等級 8等級 9等級
(同じになる)
3年契約 10等級

なお、事故有係数適用期間の計算も、1年契約と3年契約では異なります。

保険料

保険料の決まり方も、1年契約と3年契約では異なります。無事故の場合と、事故があった場合にわけてみていきましょう。

3年間無事故の場合

1年契約の場合は、1年ごとに等級が上がるため、一般的にそれに応じて保険料も毎年安くなっていきます。
一方、3年契約では、多くの保険会社では契約時に保険料が決定し、契約期間中は保険料が変わらない設定になっていますので、無事故であったとしても保険料は変わりません。

保険期間中に事故があった場合

この場合でも、1年契約と3年契約では保険料の決まり方が異なります。契約1年目に3等級ダウン事故があったケースで考えてみましょう。
1年契約の場合、翌年の契約で3等級下がるため、保険料は高くなります。
しかし、3年契約では契約時に保険料が決定しているため、事故があって保険金を請求したとしても3年間の契約期間中に保険料が上がることはありません。なお、3年間経過後の契約更新時には前述のとおり等級が下がりますので、保険料も上がることとなります。

3年契約のメリット・デメリット

ここまで1年契約と3年契約の違いについて比較してきましたが、最後に3年契約のメリットとデメリットについてみていきましょう。

メリット

3年契約では、契約時に3年間の保険料が決定します。そのため、あらかじめ家計管理がしやすい、将来の予定が立てやすいという利点があります。ライフステージにあわせた家計プランを立てたいときには、長期契約のほうが利用しやすいでしょう。
また、1年契約のように毎年更新手続きをする必要がないのも大きなメリットです。毎日忙しく、保険契約の手続きに時間を取れない方には時間の節約になるでしょう。
さらに、保険期間中に保険料率の改定や補償・サービスの改定があっても、更新時まではその影響を受けないこともメリットといえるでしょう。「保険料率が高くなった」「補償やサービス内容が薄くなった」というときでも、契約期間中は適用されないので安心です。

デメリット

保険期間中に改定があっても影響を受けないということは、逆に言えば、保険料率の改定で保険料が安くなったり、補償やサービスを拡充する改定があったりしても、契約期間中はその恩恵を受けられないということが言えます。この点はデメリットといえるでしょう。
契約内容を変更して保険料を安くしたいという場合でも、契約更新時にしか反映できない内容だと長期間持ち越すことになります。例えば、免許証の色がゴールドになったとしても、満期日までは始期日時点の免許証の色での保険料が適用されるため、保険料を安くできないケースがあるかもしれません。

また、直接的なデメリットではないものの注意すべき点が2つあります。
1つ目は、契約期間中に事故にあって保険金を請求した場合、期間中の保険料には変更がなくても、更新時には事故による等級ダウンが保険料に反映するという点です。契約期間中は保険料が変わらないためあまり意識しないかもしれませんが、事故時に保険金請求する際は更新後の保険料のことも意識しておきましょう。
2つ目は、そもそもの保険料水準が高い点です。3年契約は代理店型の保険会社でしか取り扱っていません。ネット自動車保険と比較するとどうしても保険料が高くなってしまう場合が多いため、注意が必要です。

まとめ

1年契約と長期契約では契約期間の長さ以外に異なる点があります。事故があっても契約期間中は保険料が変わらない、手続き回数が少なくて済む、などといった点が魅力的に思える長期契約も、すべてにおいて1年契約より優れているわけではありません。長期契約を検討する場合は、「こんなはずではなかった」と思わぬことで後悔しないよう、1年契約との違いを理解したうえで検討することが重要です。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員