大型免許とは。取得条件や運転可能な自動車範囲、免許の取得で利用できる補助金・助成金についても解説します
2024年1月17日
大型免許は普通免許・準中型免許・中型免許と並ぶ、運転免許の種類の一つで、バスやトラック、ダンプカーなどの大型自動車を運転するのに必要です。
普通車とは違って仕事に関連して取得する方の多い大型免許ですが、具体的にどうすれば取得できるのかご存じない方もいるでしょう。
本記事では、大型免許の概要、取得条件や運転対象となる自動車、取得にかかる費用などをわかりやすく紹介します。
大型免許とは
大型免許とは、車両総重量11トン以上・最大積載量6.5トン以上・乗車定員30人以上の大型自動車を運転するのに必要な免許です。
大型免許は正確には一種、二種に分かれており、トラックやダンプカー、ミキサー車、タンクローリーなどを公道で運転する際には「大型自動車第一種免許」、バスなどに乗客を乗せて運転する際には「大型自動車第二種免許」を取得します。
大型免許で運転できる大型自動車の定義は、警察庁が管轄する道路交通法に定められています。また、大型免許を取得した方は中型自動車・準中型自動車の運転も可能です。
取得条件
大型免許の取得条件は2022年5月13日に次のように変更されています。
変更前 | 現行(2022年5月13日~) | |
---|---|---|
年齢 | 21歳以上 | 19歳以上(19~21歳は特別な教習を修了する必要がある) |
取得条件 | 普通免許・中型免許・準中型免許または大型特殊免許の保有期間3年以上 | 普通免許・中型免許・準中型免許または大型特殊免許の保有期間1年以上 |
普通免許など各免許の保有中に免許停止を受けていた場合、その期間は保有期間にカウントされません。
また2022年の条件変更では、運転経験の少ない21歳までの若年層を対象に、座学や実車を交えた特別な教育課程を修了する条件も加えられています。
普通免許の取得では原則として両眼で0.7以上(かつ片眼で0.3以上)の視力を求められますが、大型免許ではより厳しい視力を含めた複数の身体条件を満たさなければなりません。
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視力条件 | 裸眼あるいは眼鏡やコンタクトレンズの使用で、 | 両眼0.8以上かつ片目それぞれ0.5以上の視力
---|---|
深視力条件 | 三桿(さんかん)法※1により2.5mの距離での3回検査し、 | 誤差の平均が2cm以下の深視力
聴力条件 | 10mの距離から90dBの警報機の音を聞き取れる聴力(補聴器の利用可能) |
3本の棒のうち真ん中の1本を前後に動かし、3本の棒が一列にそろったかどうかで奥行知覚を検査する方法
運転できる車の範囲
高い運転スキルを必要とする大型免許を取得すると、さまざまな自動車の運転が可能になります。具体的には大型自動車のほか、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、小型特殊自動車、原動機付自転車です。
車両の | 種類車両の概要 | 大型免許で | 運転できる車両
---|---|---|
大型 | 自動車車両総重量11トン以上・最大積載量6.5トン以上・乗車定員30人以上 | 〇 |
中型 | 自動車車両総重量7.5トン以上11トン未満・最大積載量4.5トン以上6.5トン未満・乗車定員11人以上29人以下 | 〇 |
準中型 | 自動車車両総重量3.5トン以上7.5トン未満・最大積載量2トン以上4.5トン未満・乗車定員10人以下 | 〇 |
普通 | 自動車車両総重量3.5トン未満・最大積載量2トン未満・乗車定員10人以下 | 〇 |
大型特殊自動車 | 建設作業や除雪作業関係などの特殊自動車のうち小型特殊自動車以外の車両 | × |
大型自動二輪車 | 大型バイク(排気量400㏄超も可能) | × |
普通自動二輪車 | 小型バイク(排気量400ccまで) | × |
小型特殊自動車 | 工場や農場などで使われる特殊自動車で、使われる場所により条件は異なる | 〇 |
原動機付自転車 | 原付一種の50㏄以下の原付バイク、原付二種の125㏄以下の原付バイク | 〇 |
大型免許は普通自動車、小型特殊自動車、原動機付自転車のみを運転できる普通免許と比べると、ほとんどの車両に対応しています。
大型免許の免許取得方法
大型免許は、運転免許試験場で適性検査と技能試験に合格すれば取得でき、基本的に普通免許と方法は変わりません。
- 自動車教習所に通学
- 合宿免許へ参加
- 一発試験の受験
それでは、上記三つの取得方法をそれぞれ詳しく確認しましょう。
自動車教習所への通学
普通免許と同じく、多くの方に選ばれる方法が自動車教習所への通学です。大型免許を取るためのカリキュラムが組まれているため、効率よく、確実に免許を取得できます。
自動車教習所に通学すると運転免許試験場での技能試験が免除になり、適性検査に合格するだけで大型免許を取得できます。
大型免許を取得する際の教習時間は、現在保有している免許の種類によって変わります。例えば、普通自動車免許(AT限定)なら学科教習1時限・技能教習34時限、準中型免許なら技能教習23時限、中型免許(MT)なら技能教習14時限の教習が必要です。
合宿免許へ参加
普通免許とは違い、大型免許に対応する自動車教習所が通学範囲にない場合があります。また、短期間で確実に取得しなければならない方もいるでしょう。そんなときに便利なのが、合宿免許への参加です。
合宿免許であれば、1~2週間程度ですべての教習を集中的に終えられます。
合宿免許も、自動車教習所への通学と同様、運転免許試験場では適性検査のみの受検となります。
一発試験の受験
通称、「一発試験」と呼ばれる、教習所に通わずに直接運転免許センターで運転技能試験を受験する方法もあります。
大型免許の取得条件に、普通免許などの1年以上の保有があるため、すでに運転技術に自信のある方なら、運転免許試験場で一発試験に挑戦する方法も選択可能です。
ただし、大型免許を受験するには次のような手順を踏まなければなりません。
- 仮免許試験(適性検査と場内試験)を受けて合格する
- 指定された条件を満たした同乗者とともに路上練習を10時間以上行う
- 本試験(適性検査と技能試験)を受けて合格する
自動車教習所に通うよりもコストを抑えられるものの、高いスキルの必要な大型免許を独学で学ぶのは難しく、また路上練習に使う車両の用意や条件を満たす同乗者探しも大変です。一発試験とはいえ、言葉ほどカンタンではない可能性があることを覚えておきましょう。
大型免許の免許取得費用
大型免許の取得にかかる費用は、取得方法によって異なります。ここでは、免許取得までにかかる費用の目安を紹介します。
自動車教習所への通学費用
大型免許を取得する際の自動車教習所への通学費用は、現在保有している免許の種類や教習所ごとに変わります。おおまかな目安は次のとおりです。
保有する免許の種類 | 費用の目安 |
---|---|
普通免許(AT限定) | 35万円~45万円 |
普通免許(MT) | 30万円~40万円 |
準中型免許(5トン限定) | 25万円~35万円 |
中型免許 | 20万円~30万円 |
このほか、運転免許試験場で適性検査の受験料1,550円と免許証交付料2,050円を支払う必要があります。
合宿免許への参加費用
合宿免許にかかる費用は、自動車教習所への通学費用とほとんど同じです。宿泊費用が含まれるため、部屋タイプによる違いで料金に差が出る可能性もあります。
一発試験の受験費用
運転免許試験場で一発試験に挑戦する場合、仮免許試験と本試験に必要な料金は以下のとおりです。
仮免許試験 合計5,500円
受験料 | 2,900円 |
---|---|
免許証交付料 | 1,150円 |
受験車両使用料 | 1,450円 |
本試験 合計30,650円
受験料 | 4,100円 | |
---|---|---|
免許証交付料 | 2,050円 | |
取得時講習 | 大型車講習 | 17,800円 |
応急救護処置講習 | 4,200円 | |
受験車両 | 使用料2,500円 |
上記のほか、運転免許試験場で適性検査の受験料1,550円を支払う必要があります。
自動車教習所や合宿免許を利用する場合と違って、技能試験を受ける分、受験にかかる費用が高めです。また、一発試験の場合、運転免許証の交付は取得時講習(大型車講習4時間、応急救護処置講習3時間)を受けたあとになります。
大型免許の取得で利用できる補助金・助成金
トラックやバスのドライバー不足が社会問題となっている今、大型免許の取得で受けられる補助金や助成金が注目されています。制度ごとに異なる適用条件を確認のうえ、該当する場合にはぜひ活用して取得費用を抑えましょう。
人材開発支援助成金
(若年人材育成訓練)人材開発支援助成金は、従業員のキャリア形成を目的とした訓練中に会社が支払う経費や賃金を、国が一部助成する制度です。
人材開発支援助成金には7コースがあります。そのうち、業務に関連した技能を習得させる「人材育成支援コース」や建設労働者の技術向上を目的とした「建設労働者技能実習コース」が、中型免許の取得サポートに適しています。
対象は正規雇用の従業員で、申請や支給決定は大型免許の教習を受けたあとになります。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は雇用保険の給付制度の一つで、目的は働く人のキャリアアップから雇用の安定を図ることです。大型免許の取得のために自動車教習所に通った場合、受講費用の40%相当(上限20万円)までが支給されます。
支給要件は次の3点です。
- 自動車教習所の教習開始日に雇用保険に加入しており、かつ加入期間が3年以上※2
- 自動車教習所の教習開始日に雇用保険に未加入の場合、教習開始日が退職日から1年以内
- 過去に教育訓練給付を受給している場合、教習開始日までに3年以上経過
初めて支給申請する方は、当面のあいだ、加入期間1年以上も対象となります
また、大型免許一種・二種を給付対象とする自動車教習所は限定されており、お住まいの地域では利用が難しい場合もあります。
男性ドライバー免許取得助成
国だけではなく、ドライバーを必要とする団体や会社が行う助成金制度もあります。
例えば、東京都トラック協会の「男性ドライバー免許取得助成」では、5年以上継続して雇用している従業員が大型免許を取得する際、教習費用を負担した会社に対して1人あたり5万円が助成されます。
大型免許の取得を目指すなら、こうした制度の充実した業界や会社を検討してみるのもいいでしょう。
参照:一般社団法人東京都トラック協会「令和5年度 男性ドライバー免許取得助成 実施要綱」
本記事の情報は2024年1月時点での内容です。
監修:木下 隆之
明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務。独立後、プロレーシングドライバーとして活躍。全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。雑誌にも11本の「連載エッセイ」に執筆。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。